第1章 シークレットメロディ
「な、気分ってなに!?信じらんない!」
「嘘だよそんな怒んなって。さっきのお前の話しを迅に相談したいだけだよ」
「なんであの人にするんですか!あたしは太刀川さんだから話したのに!」
「まーまー、ちょっと落ち着け、な?すぐ終わるから」
冷静沈着、とはまた違う。感情を上手く出せないのか、世間を斜に見ているだけか。いつも冷めている望月が珍しく吠えた。
頬を赤らめて剥き出しの不平は心が穏やかでない証拠だろう。
だが俺の中でもまだきちんと噛み合ってない事象をこのままにしておくのもひどく後味が悪い。
俺にだって納得する義務があるんじゃねーの、なんて。謎の責任感が生まれたのは、迅と顔を合わすたび脱兎の如く逃げまわる彼女がいよいよ不憫に見えたから。
というのは建前で、単なる好奇心だと怒りに震える望月には決して知られちゃいけない本音だ。
「あ、いたいた!太刀川さん」
「あれお前、来るの早くないか?」
「ちょうど近くにいたからね」
「なんだよ用意周到じゃねーの」
「そうでもないよ。花衣ちゃん、久しぶりだね」
手をあげふらっと姿を見せた迅が俺の隣に座った。
望月はと言えば視界にコイツを捉えた途端、不貞腐れながら冷めた目を細めて威嚇してる。
すげー嫌われたもんだな。
笑いながら彼女には聞こえない音量で呟いてから俺の方に向き直った。