第18章 振り向くな
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その友人の友人というのは男性です。ここではAさんとしておきます。
Aさんは高校のときに部活でサッカーをやっていたそうです。その高校のサッカー部は結構強かったらしく、夏には欠かさず合宿をしていたようです。それはいつも同じ宿泊施設で行われていました。
その施設は、いかにも高校の部活の合宿で使いそうな、だだっ広い座敷の雑魚寝部屋と簡素な食事を出す食堂、広いグラウンドを備えたところです。名前は仮に『K合宿所』としておきます。
K合宿所には、10年位前に新館ができて以来、全く使わなくなってしまった『旧館』という建物がありました。
その旧館は木造の2階建てで、長年放置されていたせいか、壁面はすっかり蔦で覆われ、ガラスも所々破れていました。老朽化から倒壊の恐れがあるとかで、『中は立入禁止』とK合宿所の人からは厳しく言われていたそうです。
恐ろしい出来事が起こったのは、Aさんが3年生の最後の合宿のときでした。
Aさんたちは例年通り、K合宿所に来て、きつい練習をしていました。特に3年生は伝統的にこの合宿で引退をすることになっていたので、特別な思い入れがあったそうです。
その年の3年生はAさんを含めて8人いました。みな結構仲がよく、合宿二日目の夜も、練習がきつく疲れているにも関わらず、夜遅くまで話し込んでいたそうです。
そのうち、一人が怪談を話し始めました。しかもK合宿所の旧館にまつわる話です。
それは、何年か前に旧館に肝試しに行ったサッカー部員が、途中で携帯電話から電話をしてきたが、そこで断末魔の叫びを残したまま行方不明になってしまった、というような話だったそうです。
その話をきっかけに怪談話が始まり、すっかり盛り上がって挙げ句、「俺たちも肝試しをしよう」ということになったそうです。
とはいえ、先生が見回りに来ることもあるので、8人のうち4人は部屋で待機をし、4人が旧館に向かうということになりました。旧館は彼らが宿泊していた部屋からちょうど真正面に見えるところにあったので、都合が良かったのです。
外に出る組の4人は窓からそっと抜け出し、旧館を目指します。