第3章 ホシガリサマ
「ホシガリサマの困ったところはここなのよ。お願いした後、何かをいらないと思うと強引にそれを取っていってしまうの。ホシガルの」
「それって、怪談とか都市伝説みたいなものなんでしょう?」
A子は受験勉強で疲れたから気分転換にこんな事を言ったのだろうと私は思った。
「ふふ、面白かったでしょう?」
「でも、それなら、大事じゃないものをあげればいいんじゃない?」
私は言った。
「そう考えた女の子もいたのよ。その子は好きな男の子に振り向いてほしくて、ホシガリサマにお願いしたの。そうして、わざと特に大事じゃない物を、そうね・・・目覚まし時計を『いらない』って言ってから眠ったの。そうしたら、ホシガリサマが出てきた。
『ネエ イラナイならソレチョウダイ』って。
その子は『いいよ』って言った。
でも、ホシガリサマはちょっと怒ったように言ったの。
『コレ、ダイジナモノじゃない。ワタシもイラナイ。ワタシ、ベツのがいい』
そして、その『何か』は、よく聞き取れなかったのだけど、『何か』をチョウダイって言って手を出してきた。
その瞬間、女の子は汗びっしょりで起きたの。男の子の話を知っていたその子は慌てて家族の異常を確認したわ。でも、みんな生きていた。
ただね、」
A子の話には熱がこもっていた。私も思わず、ゴクリと息を呑む。
「ただ、飼っていた犬が、食中毒で死んでいたの」
「そんな・・・」
「つまり、大事じゃないものをあげようとすると、何か別の大事なものをホシガルの。多分、命をね。」
「こわ!」
私は怖がってみせた。
受験勉強の余興には丁度よかった。
その日の帰り道、私はA子と駅まで一緒に歩いていた。
その途中、A子がふいに口を開いた。
「実はね、私、お願いしたことあるの。この話を知っていたのにね。お願いは他愛もないもの。その時、好きだった男の子と付き合えますように、って」
「え?」
私はA子が声のトーンを落として真面目に話すので、本当のことかと思った。でも、すぐに、冗談だと気づいた。さっきの話の続きで私を怖がらせようとしているんだって。
「冗談でしょう?」
「ううん、さっきの女の子、実は私の事。犬のメイ、大事だったのに死んじゃった。私、悲しかったんだ」
A子はまだ話し続ける。なんだか様子がオカシイ・・・。