第6章 ノーサンクス・スイートハート
「そんな仮説立てたとて、ですよ」
「花衣って昔から思ってたけど、見た目と違ってそっちは真面目っつーか、重いよな」
「なにか問題あります?」
「いんや、そゆとこ含め研磨にはぴったりだと思うけど」
「なんで?」
「アイツもたぶん、そっち寄り?」
「そうなんだ」
グラスに残ったひと口分のアイスコーヒーをずずっと飲み干す黒尾さんを尻目に、そう言えば研磨くんの色恋なんて今まで聞いたことなかったと、過去に馳せた。
私の恋愛遍歴は知られてるのに、恋バナのこの字すら話したこともない。ゲームかご飯か私の泣き言か。話題がないと無言もあったな。そのどれもに絶妙な距離感でいつも聞いてくれていたことを思い出してはっとなる。
私ってもしかして、すこぶるめんどくさい女だったんじゃないか?そしてそんな女に絡まれても尚普通に接してくれていた彼は、
「すこぶる良い男だったんじゃないか?」
「いやいや待て待て。ぶっ飛んでんなと思ったらいきなり帰ってきてなんだよその発言。支離滅裂すぎんだろ」
「あ、すいません。研磨くんって良い男だよなって妄想してました」
「妄想してたんかーい」
黒尾さんの乾いた笑いが店内に響いて、そのタイミングで戻ってきた理子が席につく。次のリベンジ飲み会いつにする?とか、邪魔なの入んねえように宅飲みがいいなとか、喋ってる2人の会話を耳で拾いながらカフェオレのストローに口をつけ、そうして考えてみる。
もし友達以上に思ってたら。
全くもって嫌じゃない、寧ろどんな彼が見れるんだろうなと、不覚にもときめいてしまった。