第3章 喪失感/シリアス微糖
いよいよ太陽が傾いてきた頃。
繭は幼い頃から何度も来たことのある海沿いのコンクリート通路の上で膝を抱えていた。
潮の匂いも強い風も、やや肌寒い温度も。何もかも飲み込んでくれそうな海そのものも 今の底辺まで落ちた繭には似合っている。冷たい下半身を軽く揺すってから、もう一度きつく膝を抱え直した。
少しだけ顔を上げてみる。
白波と光る水面がいつもより輝いて見えるのは、繭が泣いているせいだ。心も体も温度を失っているのに溢れる涙だけが妙に暖かかった。
既にここに来て1時間はたっただろうか。ようやく涙が止まってきたと思ったら、また勝手に流れてくる。ずっとこの繰り返しの中にいるだけだった。顔を煽る潮風が涙を乾かし、肌が引きつる違和感を強くする。
繭はもう一度、自身の膝に顔を埋めた。波の音と、時折国道を通る車の音、ごくまれに談笑する若者が通り過ぎる音もある。回りの時は正確に流れているのに、繭だけは動けないままだった。
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凛は舗装された道の上を自転車で走っていた。一通り身体を動かした後でもあり格好も動きやすいジャージであるからか足は軽い。背中に背負ったサッカー道具や制服が入る大きさのリュックが時折カシャンと音を立てている。
一定のペースで距離を進めたいのに帰宅途中の学生が広がりだらだら歩いている様や、大学生くらいの男女がのらくらしながら道の真ん中に留まる姿には微かな苛立ちを覚えながらも、無理やりに自分の動きを保つ。
そんな折、ふと視界に入るのは幼馴染の繭だった。
小さくまとまって膝を抱えているから顔は見えないが全体の雰囲気、体型、髪の質感から一瞬で誰かの判断はついた。
ただ一つ不可解なのは、なぜこの時間のこんな場所に しかも普通とは違う状態で繭がそこにいるかだ。