第1章 レンズ越しの体温 【ヒロアカ 轟焦凍×モデル】
スタジオの喧騒が遠のく中、はメイクを落としながら、マネージャーから差し出されたタブレットの画面を覗き込んだ。
「正式にオファーが来たわよ。あの有名ブランドの年間広告モデル、そしてブランドアンバサダーの件」
画面に躍るのは、世界的な認知度を誇るハイブランドのロゴ。
そして、その隣にはもう一人の起用候補としてあの男の名前があった。
「……ショートさんと、ペアね」
「ええ。先日の雑誌が業界内で相当な評価だったみたい。一年契約の大きな仕事よ」
は、鏡の中の自分と目が合う。
あの撮影で感じた彼の不器用な熱。
そして先日、個室で向き合った時の少しだけ浮ついた空気。
仕事として完璧なものを作り上げたいというプロ意識と、彼とまた長い時間を共にできるという個人的な期待が、彼女の胸の中で心地よく混ざり合った。
「楽しみね。彼、また顔を赤くするかしら」
悪戯っぽく微笑む彼女の瞳は、すでに次の共作を見据えていた。
一方、その知らせはショートの事務所にも激震を走らせていた。
「おい、ショート! 冗談だろ、このブランドのアンバサダーだと!?」
デスクに叩きつけられた企画書を見て、バーニンが派手な声を上げる。
周囲にいたサイドキックたちも、その内容に驚きを隠せない。
新人ヒーローが受けるにはあまりに巨大すぎる規模の広告案件だった。
「実績としてはまだ新人だが、例の雑誌の影響力が凄まじいな。事務所としても断る理由がない」
「当たり前だろ! 応援してやるよ、ショート。しっかりモデルの姉ちゃんをエスコートしてこい!」
バーニンに背中をバシバシと叩かれながら、轟は手元の資料を見つめた。
そこに添えられた、凛としたの写真。
上鳴たちに言われた「抱きたいと思わないのか」という言葉が、不意に脳裏をかすめて火を吹く。
一年の任期。
これから何度も彼女と肩を並べることになる。
(……仕事だ。私情を混ぜるな)
自分に言い聞かせれば言い聞かせるほど、喉の奥が渇くのを感じる。
轟は小さく息を吐き、力強い筆致で承諾のサインを入れた。
「……ああ。精一杯、務めさせてもらう」
二人の関係が、単なる「一回限りの共演」から、逃げ場のない「深い繋がり」へと変わろうとしていた。