緋色の海に溶ける蜜情 【ONE PIECE 赤髪 R18】
第9章 終わりと始まりの街で
しかし、シャンクスは小さく首を横に振った。
その横顔にはどこか遠い日を懐かしむような、切ない色が滲む。
「いや……俺は行ってねェんだ」
「え……?」
「最後の島へ向かう直前にな、同じ見習いのバギーってやつが……突然、酷い熱病で倒れちまったんだ」
シャンクスは海を見つめたままぽつり、ぽつりと静かに言葉を紡ぐ。
「あいつ、高熱でうなされながらも『俺も行く』って言やがってさ。……だけど、そんな身体で行けるような甘い海じゃねェ。だから俺は共に残ったんだ。あいつにつきっきりで、看病してた」
「バギーさんって方のために、残った……」
「あぁ。バギーを置いていくわけにはいかねェからな。……船長たちを見送るとき、俺はバギーに言ったんだ。『行くなら、おれ達の足で、おれ達の船で行こうぜ』ってな」
シャンクスは水平線からわずかに顔を出した朝日の光を浴びながら、目を細めた。
その瞳にはかつて少年だった頃の自分が、そして、かつて背中を見送った偉大な海賊王の姿が映っているようだった。
「……ロジャー船長たちが帰ってきたとき、俺は、船長に色んなことを聞いた。……それから、たくさん泣いたよ」
「……シャンクスさん……」
彼の声のトーンが、切なさを孕んで少しだけ低くなる。
はその痛みを少しでも分け合うように、そっと彼の大きな手を両手で包み込んだ。
シャンクスは一瞬驚いたように自分の手元を見つめ、それから、包み返すように彼女の手を優しく握り締めた。
「……だけどな、。俺は後悔してねェよ。あの島へ行かなかったことも、その後、バギーと別々の道を歩むことになったことも」
シャンクスはの方を向き、まっすぐにその瞳を見つめた。