緋色の海に溶ける蜜情 【ONE PIECE 赤髪 R18】
第9章 終わりと始まりの街で
かつての「脱水症状事件」以来、赤髪海賊団のヒエラルキーは明確になっていた。
船の秩序との健康を守るためなら、副船長と船医は船長を物理的に排除することも厭わない。
「……またクマができてるな。お頭、今夜は別室だ」
「待てホンゴウ! これは宴会で盛り上がっただけで……!」
「問答無用だ。副船長、連れてけ」
「あぁ」
そんなやり取りを経て、シャンクスもようやく学んだ。
無理に抱き潰せば、翌日には彼女の温もりさえ感じられない孤独な夜が待っているということを。
「……今日はこれくらいにしといてやるよ。明日も一緒に寝てェからな」
そう言って、まだ物足りなそうな瞳をしながらも、優しく髪を撫でて眠りにつくシャンクス。
にとってその不器用な「手加減」は、何よりも自分を慈しんでくれている証拠のように思えてたまらなく愛おしかった。
グランドラインへの入り口の前に寄る島、終わりと始まりの街「ローグタウン」
かつて海賊王が処刑され「大海賊時代」始まったその島に辿り着いたとき、一行を包む空気はいつもと違っていた。
賑わう港、潮の香り。
活気にあふれた街並みを前に、クルーたちが「イーストブルーでの最後の上陸だ!」と浮き足立つ中で、シャンクスだけは静かに水平線を見つめていた。
「……シャンクスさん?」
隣を歩くが、そっと彼の袖を引く。
いつもなら真っ先に騒ぎ出すはずの彼が、今はひどく落ち着いていて、どこか遠くを見つめるような、鋭くも寂しげな瞳をしていたからだ。
「……あぁ、悪い。……ローグタウンか。ずいぶん、久々だな」
そう言って笑うシャンクスの横顔は、普段の「絶倫バカ」と揶揄される彼とは別人のようだった。
広場の方へと視線を向けるその佇まいには、海賊としての風格と、かつてこの地で何かを背負った男の重みが漂っている。
「……わるぃ、今日は少し、一人で歩きたい場所があるんだ。……、後で合流してもいいか?」
「……はい、もちろんです」
彼女の頭をポンと叩きいつになく真剣な、けれど優しい眼差しを残してシャンクスは人混みへと消えていった。