第5章 真名とは
兎を狩ってその肉を頂き、温かさに埋まろうと、玄の尻尾に抱きつく。ピクッと動いた尻尾は離れることはなく、大人しく私に抱かれている。毛並みを撫でる度に、玄の身体が跳ねていた。
「玄……尻尾、気持ち良いの?」
「五月蝿い。其方だからな……」
尻尾を撫でていた手を取られ、前に回されると硬い何かに触れる。振り向いた玄に口付けられた。応えるように身体を起こし、自ら押し付けにいく。玄と触れ合うのは、心の臓が暴れて仕方ないのに、心地良い。
「其方は今、神子であった母上に近付いておる。梓よ、神子になる覚悟はあるか」
「巫女?一応、巫女ではあったけど……」
離れた唇に名残惜しさを感じながら玄を見つめると、溜め息を吐き眉を下げて笑う。
「"神子"だ。神の子と書いて"神子"。巫の女よりも力を持つ者だ」
神子……母様は巫女ではなかったんだ。まだ神子がどんな力を持っているのかわからず、聞きながら玄の男根を握った。吐息を漏らし、身体を震わせた玄が愛おしい。
神子になれば、神託を伝えることが出来るらしく、今よりももっと力を付けることが出来る。治癒能力や魔を祓う力も倍増する。だから玄は、現世にその身を持たなかった神で在る時でも、母様と会話を出来ていたんだろう。
「其方が望むのであれば、真名を教えよう。……出来るのなら我は、真名を呼びたくはない。縛りたくはないのだ」
「……玄になら、縛られてもいいよ」
手を上下に動かしながら、白い頬に口付ける。消さなければいけない想いが、どんどん大きくなっていく。神よ、罪深い私をお許しください。貴方を愛してしまった私を。