第4章 荒神を鎮めん
私も床に膝をつき、目線を合わせる。玄を立たせて、今度は私が玄の前で跪く。片足を膝に乗せ、足袋に口付けた。
「これが、本来、あるべき姿だよ。玄御影神様……それが貴方の神名なのでしょう?」
息を呑んだ玄はすぐに足を下ろし、袖で唇を拭いてくる。力を入れすぎて、少し痛い。玄の顔を見てみると、眉を寄せ、頬を紅潮させていた。
「……其方にそう呼ばれると、心の臓が暴れ狂う。もう呼ぶな」
「……く……玄御影神様」
「っ……其方、楽しんでおるな?」
クスクスと笑っていると、頬を撫でられ、目を細めて見つめられる。ジッと見つめ返していると、豪快な笑い声が聞こえてきて、慌てて現実に戻った。
今私たちは、素盞嗚尊神社の神座にいるんだった。玄の雰囲気に飲まれて、玄しか見えなくなってしまっていた。慌てて素盞嗚尊の方に向き直り、頭を垂れる。
「良い良い。良いものを見せてもらったわ!玄御影神には、その巫女をそこまで想う理由があるのだろう」
素盞嗚尊には、その"理由"がわかっているようだった。私にはよくわからず、玄と素盞嗚尊を交互に見る。
「わっ!ちょ、玄……?」
いきなり肩に担がれ、足をばたつかせると、「静かにしろ」と両手で太腿を掴まれてしまった。付け根に指が這い、玄の背中を叩いた。
「鎮まったのなら、我らは帰るぞ。癒してもらわねば」
素盞嗚尊と志那都比古神にお礼を言われ、私を担いだままの玄は神社を後にした。