第4章 荒神を鎮めん
眩しさに目の奥が痛み、瞑っていた目を開く。腕の中の玄が固まったまま動かない。何かあったのだろうかと慌てて離れ、顔を覗き込む。
「……梓よ……其方、このような力を持っておったのか……?」
玄の翡翠の瞳と視線が交わり、首を傾げる。動いた翡翠を辿り、胸を見ると……傷がなくなっていた。
驚いていると志那都比古神が蹲り、頭を抱え始めた。近付いて声をかけると震えている。どうしたのだろう……どこか痛いのだろうか。
「素盞嗚尊……お願い…怒りを鎮めて……みんなが……」
酷く怯えている。風の音がまた大きくなった。
「……素盞嗚尊。私を殺したら、その怒りは収まるのですか?」
「そうさのう……貴様は粛清対象だが、そうなれば、そこの妖が黙っておらぬだろう」
翡翠の瞳が素盞嗚尊を睨んでいた。すると彼はとんでもないことを玄に命じる。
「神だった御前は、巫女に跪けるのか?それが見れたら……さぞ愉快で、怒りなど収まってしまうだろうな」
玄にそんなことをさせるつもりはない。私は今でも玄を神だと思っている。本当は私が彼に仕えるべきなのだ。
玄は私の目の前に来て、片膝をついた。貴方はどうして、いつも簡単に私の前で、私よりも下になるの。私が望んでいるのはこんなことではないのに。
「我が主、梓よ。我の愛しい梓よ……何時までも共に在ろう」
私の手を取った玄は、そのまま指先に口付けた。柔らかく熱い唇の感触が、私の魂を震わせる。私も玄を――愛している。