第4章 荒神を鎮めん
神座に足を踏み入れると、神力を纏った風が吹き荒れていた。屈強な大男が鎮座している。このお方が――素盞嗚尊。重畳の黒髪が無造作に背中まで伸びており、キリッとした眉が尻に向かって上がっている。
右手には神剣を携えていた。あれが……十拳剣だろうか。八岐大蛇を斬った剣。それがしっかりとその手に握られているということは、私たちをここで始末する気なのだろう。
「貴様が神和住家の生き残りか。姉上はこんな小娘に手を焼いておるのか」
荒ぶっているはずなのに、声はとても落ち着いていた。
「本当に貴様らも馬鹿なことをしたのう。妖を神域に招き入れるとは……神に隠し通せるとでも思ったのか」
「妖、ですか…?」
玄を見たが、口を噤んだままだった。素盞嗚尊はなんの話をしているのだろう。玄のことではないはず……天照の神罰が降ったのは、玄が妖として顕現する直前だ。
「玄御影神よ。何も話しておらぬのか。"神和住家は神域に妖を招き入れ、神の神罰を受けた"と」
「……この娘は何も知らぬ。話すつもりもない。天照大御神に復讐することが、この娘の生きる意味になるのであれば、我は止めん。喜んで力を貸そう」
玄の言葉に素盞嗚尊は、豪快に笑い始める。「随分と巫女に入れ込んでおるな」と。私の知らないことばかりが、素盞嗚尊と玄の間で交わされている。私は全てを知りたいのに、ずっと……蚊帳の外だった。