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夢幻泡影②【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第5章 心を揺さぶるエレジー【パンダだって/葦を啣む】


「まさみち」

 渋谷の戦いが及ばない穏やかな森の中、夜蛾が大木に腰を下ろしていると、ネクタイをつけた犬の【呪骸】――タケルに名前を呼ばれた。

「みんな 心配してるよ、元気がないって」

「そうか」

「だから 僕、言ってやったんだ。元気がなければ、元気づければいいって」

「そうか」

「天才だろ?」


 ――「本当にいいんだな? “コイツ”はオマエの甥ではない。甥の情報を持った“何か”だ」


 タケルは、現在は一級術師に名を連ねる日下部 篤也の妹の心を救うため、彼女の息子の情報で造った【呪骸】だ。

 親指を立てて得意げに言うタケルに、夜蛾は「そうだな」と頭を撫でてやる。

「タケル。すまないが しばらく帰れない。皆にもそう伝えてくれ」

「また出張?」

「あぁ。長い出張だ」

 不満そうに眉を下げるタケルに、夜蛾は重々しく頷いた。

「大丈夫。この森は天元様が守ってくれている。オマエの母さんも、また会いに来てくれる」

 それにな、と夜蛾は続ける。

「ある男にオマエたちのことを頼んでる。たまに様子を見に来るだろうから、仲良くしてやってくれ」

「どんなヤツ?」

「……バカみたいに真面目で、寂しがりなヤツだ」

「そっかぁ。じゃあ、寂しそうにしてたら 俺たちで励ましてやるよ!」

 ニカッと笑うタケルに見せている自分が、どういう顔をしているか分からなかった。


 ――大丈夫だ。俺がいなくなっても……大丈夫。


 巨木の根元の小さな扉を開き、身を屈めて通ろうとしたところへ、「まさみち」と【呪骸】たちが呼んできた。
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