夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第14章 天使と巡り会うオラトリオ【東京第2結界】
――「やるじゃん、星也」
あの日、白髪頭の青年が呼びかけた少年の名前。
それを十年間、何度も思い返しては口の中で繰り返してきた。
そんな想い人と、ようやく再会できたのだ。
私のことは覚えていないようで……きっと彼にとって私は、大勢 助けたうちの一人に過ぎないのだろう。
それでも彼はあのときと変わらない、悲しいくらい綺麗な人だった。
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『本当にやるのか?』
「ここを出られるなら その方が助かる。無理なら諦めて君たちに託そう」
結界の端まで来た華は、そんな星也と“天使”の会話を聞いていた。
「僕――というより、僕たち神ノ原一門の呪力は敏感で変質しやすい。だから、術式の補助を借りながら来栖さんの呪力に触れさせ、君の呪力に偽装する」
『偽装……結界を欺こう、というわけか』
「僕の呪力操作は姉さんほど精密じゃない。長時間は無理だろうが……結界を通過する一瞬だけなら、理論上は可能だ」
あ、お姉さんがいるんだ。
そんなどうでもいいことに気を取られていると、「来栖さん」と名前が呼ばれた。
「手を貸してくれるかな?」
「え……? 手……?」
緊張して震えてしまう指先を、星也の綺麗な手のひらにそっと乗せる。すると、彼はするりと手のひらを合わせ、指先を絡めてきた。
「ひぇ……⁉ はわわわっ⁉ あ、あ、あぁ、あの……⁉」
「呪力を練って僕に流してくれ」
「じゅ、呪力⁉ えっと……えっと……⁉」
言われた通り、慌てて呪力を流すと、彼の端正な顔に苦痛が滲む。
「もう少し……加減してもらえると、助かる……」
「ご、ごごご、ごめんなさい……っ!」
だが、こちらとしては十年待ち焦がれ、憧れた人が目の前にいるのだ。そんな彼が自分に触れて……いや、指を絡めている。
平常心で呪力を練れるわけがない。