夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第14章 天使と巡り会うオラトリオ【東京第2結界】
「仕方ない。少し我慢してくれ」
そう言ったかと思うと、星也は華の頬を両手で掴み、顔を近づけてきた。
「ひゃあ……っ⁉」
な、何⁉ き、キス⁉ キスされちゃうの⁉
だが、ギュッと目を強く瞑って身構えるも、唇に柔らかな感触はなく、代わりに星也が額を合わせる。だが、華には破壊力抜群だった。
――ち、近い近い近い……っ!
顔から火が出るのではないかと思うほど顔が熱くなり、身体が緊張に強張った。
「大丈夫。落ち着いて。呪力は僕が受け取るから、ゆっくり呼吸をしてくれるだけでいい」
低い声音が耳朶を甘く打つ。「大丈夫」、「ゆっくり」と星也が繰り返すごとに暴れる心臓が落ち着きを取り戻していく。
「はっ、はっ」と短かった呼吸が、深く長いものとなった。
「うん、その調子。もう少し そのまま……」
「……はい……」
それからじっくりと時間をかけ、やがて星也が透き通る夜色の瞳を開いた。
『……驚いたな。華とほとんど呪力に差異が感じられない。これなら私の術式でも華と同一と認識させられそうだ』
「まだ安心はできないよ。それに、あまり長くはもたない。すぐに結界を突破する」
そう言って、星也が式神の【白虎】を呼んだ。
「しっかり掴まってて。舌を噛まないようにね」
「はい」
星也に促され、【白虎】の柔らかな背中に跨る。
次いで前に乗る星也の腰に恐る恐る腕を回した華は、高鳴る心臓に身を任せ、ぴったりと広い背中にくっついたのだった。