夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第14章 天使と巡り会うオラトリオ【東京第2結界】
「遅くなって すまない」
“天使”のような容姿の彼女の前で膝を折り、星也は視線を合わせた。
「怪我は?」
「あ、ありません!」
少し上擦った声で彼女は首を振ると、「あの!」と意を決したように見上げてくる。
「あなたは……星也なんですか?」
「そうだが……」
なぜ 名前を……と思って、札埜との戦いで名乗ったことを思い出した。あれを聞いていたのだろう。そうでなくても、コガネに聞けば分かる。
「君は?」
「来栖 華です。前に私のこと……」
緑色の瞳が切なげに揺れた。
「どうした? やっぱり、どこか痛むのか?」
首を傾げて尋ねると、彼女は「いえ、何でもありません」と寂しげに瞼を伏せる。
『世話をかけたね。礼を言おう』
突然の声に、星也は思わず目を見開いた。彼女の頬に口が現れて喋ったのだ。
「……聞きたいことがある」
ほとんど確信を持って、星也は口を開いた。
「僕は――いや、“僕たち”は訳あって、“天使”と呼ばれる泳者を探しているんだ。それは……君のことか?」
『おそらく そうだろう』
ゴクリと星也は息を呑む。
五条解放は“天使”の協力なくしては実現できない。
『私を探していたということは、私の術式を知ってのことか?』
「そうだ。君の『術式の消滅』を使って、特級呪物【獄門疆】の封印を解いてもらいたい」
『ふむ。君は【陰陽術式】の使い手だろう? 私の力を使わずとも解呪はできるはずだが?』
【陰陽術式】を知っている? いや、過去の術師――それも、安倍 晴明の知名度なら あり得ない話ではないか。