夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第14章 天使と巡り会うオラトリオ【東京第2結界】
「ぐ、ぅ! う、あぁっ‼」
身体が熱に焼かれ、ヒリヒリと引きつるような痛みに苛まれる。
「ぐ……【十二番――蹴り、落とせ】ッ‼︎」
札埜の術式【式神憑依術】は、呪符に封じている己の式神を自身に憑依させることができる。重ね掛けも可能だが、一度に三体が限界だ。それ以上は、反動が大きい。
落下の勢いが増すも、ギジリッと身体に激痛が走る。だが、青年の式神【勾炎龍】の炎は止まらない。止められない。
「うぁっ! あぁぁあぁぁぁぁ――――ッ‼」
絶叫が空気を震わせ、やがて炎に焼かれた札埜の身体が制御を失い、地上へ落下した。ドゴッと落下の衝撃で地面が割れる。
「はぁっ! はぁっ! はぁ……っ! くそっ‼」
鉛のように重たい身体が地面に沈んだ。辛うじて動かせる腕で、苛立ちまぎれに力なく地を打つ。
「……【陰陽術式】は、力を得ようとすれば それだけ大きな“縛り”を科かさなければならない。オマエ、どれだけ自分を“縛ってる”?」
「さぁ……どうだろうな?」
そうはぐらかして、青年は呪具の切っ先を向けてきた。
「命までは取らない。ただ、点だけ譲ってくれ。大切な人を助けるために必要なんだ」
「大切な……それがオマエの守りたいモンか?」
「僕が守りたいのは家族だ。家族と、その日常。彼女もまた、僕に必要な……」
夜色の瞳に暗い陰が落ちる様に、心を壊していく晴明の姿が重なる。
「……そんなに守りてぇモンがあるなら、オレから忠告だ」
かつて、手を伸ばしても届かなかった背中。それを掴むために、札埜は青年のボトムの裾を掴んだ。