第6章 クレッシェンドに高まる熱【賭け試合】
「ルールは二つ――“逃げるな”、“術式は使うな”」
駐車場の中、自販機横のベンチに腰を掛け、虎杖は説明を受けていた。説明してくれているのは、先ほど伏黒に殴りかかった屈強な男だ。
「なんで? 俺は別に術式 使ってもらっていいけど」
「客はほとんど非術師――視えない側の人間だ。視えない勝負をされても盛り上がらん」
そりゃあ、そうか。こういうところは誠実なんだな。
「“逃げるな”の方は?」
「“客の見える範囲で戦え”ってことだ」
「どこまでも客だなぁ」
「当然だ。ビジネスだぞ」
やっていることは違法なのに、どこまでもお客様第一でやっている。その真面目さを別のところで発揮できなかったのが悔やまれた。
「胴元ってどんな人?」
少し探りを入れてみる。別に不自然な流れではない……よな。
「気になるか?」
「まぁね」
よかった。不自然に思われてはいないようだ。
「会えば分かるさ」
「会えんの?」
思わず目をパチクリさせると、男はニヤリと口角を上げる。