第6章 クレッシェンドに高まる熱【賭け試合】
「とにかく、お金が必要なら真っ当に稼ぎな。ここで稼ごうとしたら地獄を見るよ」
出口の方へ押しやられた詞織は振り返る。
「……ここは……どういう場所なの?」
少し探りを入れようとすると、その人は「んー?」と言って首を傾げた。
「何? 知りたいの?」
逆に探るような視線を向けられ、詞織はすぐに不利を悟った。無理に追及したら怪しまれる。
この人はおそらく 運営側の人間――それも、中枢に近い人物だろう。場合によっては秤と接触できるだけの権限を持っているかもしれない。
上手く取り入れば 情報を引き出したり、秤と取り次いでくれるかもしれないが、生憎 自分にはそこまでのコミュ力や話術はない。
それよりも、下手に食い下がって高専生だとバレるのは避けたかった。
「いい……あり、がと……」
そろそろ表情筋が限界だ。早く伏黒たちと合流しよう。
頭の中で伏黒の【玉犬】と戯れたときのことを思い出しながら、詞織はどうにか柔らかで安堵した笑みを浮かべることに成功した。
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