第6章 クレッシェンドに高まる熱【賭け試合】
「……じ、実は……一緒に来てた男の人と……はぐれちゃって……(嘘)」
精一杯 声や肩を震わせ、頼りなさを演じる。どうしよう。普段 あまり動かさないから、表情筋が引き攣りそうだ。
「男? 誰?」
「わ……分かんない……パパとママが死んじゃって……お金もないし……どうしたらいいか分かんなくて……そしたら、『お金がたくさん稼げる』って、男の人がここに連れてきてくれて……(嘘っぱち)」
涙 出ろ、出ろ……出、ないか……さすがに。悲しくもないのに泣けるわけがない。
とりあえず、俯いていたら伏黒の帽子で顔が隠れるだろう。ひたすら悲しそうな顔をするのだ。
「ここが何する場所か知ってる?」
ブンブンと頼りなく首を振る。とにかく、知らぬ存ぜぬを貫く。
自分は両親を失った弱みにつけこまれた憐れな少女だ。何も知らないし聞いていない。
「そっかぁ。じゃ、君を連れてきたのはどんな人? 覚えてるよね?」
「ど、どんな……? えっと……背が高くて白髪頭の……(出まかせ)」
何となく脳裏に五条を思い浮かべる。
「背が高くて白髪? タカハシか……あのロリコンクソジジイ……観客だからって好き勝手しやがって。賭け試合(クラブ)のこと口外しないルールは観客だって同じだっつーの」
え、いるんだ……それっぽい人。申し訳ない。
ボロが出る前にさっさと用事を済ませないと、そのタカハシという人物を問いただされると面倒だ。
そう思っていると、パンクなその人が肩に触れた。