第5章 心を揺さぶるエレジー【パンダだって/葦を啣む】
「自分のエゴで死んだ人間を、生きている人間のエゴで生き返らせたっていいだろ」
真希の殺気のこもった目がこちらを睨む。妹の死とその覚悟を『エゴ』の一言で片づけたことに怒りを感じているのだろうが、それは自分とて同じだ。
真依といい、メカ丸といい……“オレ”の“くだらない日常”を勝手に壊してんじゃねぇよ。
「止めねぇなら強行するぞ」
――【水命示現法『マーメイド』】
うねるように顕現させた水が女性の形をとる。どこか神秘的な雰囲気と優しそうな顔立ち、魚の下半身を持つ彼女は、母の姿に似せて作った。
「――ごめん」
現れた【マーメイド】にポツリと謝ると、彼女は悲しそうな微笑を浮かべ、垂水の頬をほっそりとした指で撫でる。
そして 真依の顔に顔を近づけると、額に口づけを落とし、溶けるように彼女に吸い込まれた。
「――真依に何をした?」
真希が持っていた刀を垂水に突きつける。
「……【マーメイド】は、式神の中でも特別製だ。オレの魂の一部を使って作ってる」
任務で致命傷を負った際、己の魂を補完するために用意していた命綱だ。自分が弱いとは微塵も思っていないが、頑丈さではさすがに東堂に負ける。
桃が真依の胸に耳を寄せ、ハッと目を見開いた。