第5章 心を揺さぶるエレジー【パンダだって/葦を啣む】
「……心臓が……動いてる……!」
桃の言葉に、真希も膝をつき、妹の胸に触れる。次いで、視線が垂水に向けられた。
「安心しろよ。アンタの天与に影響はない。真依は死んだ。オレがやってんのは死者の冒涜だ。死んだ真依の身体を、オレの魂が無理やり生体機能に働きかけて動かしてる」
だが、あくまで垂水の魂は動力に過ぎない。動かすのは 真依の身体に刻まれた彼女の記憶。
だから、肉体に刻まれた術式は残っていても、真依には呪力を生み出すだけの感情がない。意思を持っているように見えても、それは真依の記憶がそれらしく振舞っているにすぎないのだ。
呪術師には戻れない。垂水の話に桃がさらに涙を流すも、真希は何を考えているのか分からない、底知れない暗い瞳で聞いていた。
そこへ、真依の瞼が微かに震え、双子の姉の姿を捉える。
「……え……何で、あたし……」
戸惑う真依に真希は黙って額を合わせ、抱きしめた。そして ゆっくりと離し、「真依を頼む」と短く垂水と桃に言い置く。
「ちょっと、真希……!」
真依に呼び止められ、真希が一度足を止めた。
「アンタ、これからどうするんだよ」
けれど、真依にも垂水にも、真希が返事をすることはない。真希は振り返りこちらを一瞥すると、重たい覚悟を引きずるようにして去って行った。