第5章 心を揺さぶるエレジー【パンダだって/葦を啣む】
「甚壱さん‼︎」
「そのまま止めてろ、蘭太‼︎」
凝視した対象の動きを封じる、蘭太の拘束系の術式――真希の眼前にも巨大な眼が現れ、「動くな」と言わんばかりに凝視されるも、真希は止まらなかった。
叩きつけるように巨大な目を攻撃され、蘭太の目が大量の血液が噴き出す。甚壱が容体を確認するために足を止めて振り返るが、蘭太は「構うな!」と声を上げる。
「今の禪院家が在るのは、甚爾さんの気まぐれだ! 気づいてるだろ! 真希はあの人と同じに成ったんだ‼︎」
――今! ここで! 殺るんだ‼︎
蘭太の後押しもあり、甚壱は拳を振りかぶった。甚壱の背後に巨大な拳がいくつも現れ、振り下ろすのと同時に禪院家もろとも真希をめがけ、隕石のように落下する。
轟音と共に禪院家の屋敷は破壊され、衝撃で砂埃が一帯を覆うように隠した。
「やりましたね、甚壱さん……!」
失明してしまったのか。血涙の流れる目を伏せ、蘭太が安堵の笑みを口元に刻む。
その隣を、甚壱の首を掴んだ真希が通り過ぎ、失血で気を失った蘭太の首も落とした。
そのまま掴んでいた甚壱の首を池に投げ捨てていると、「酷いなぁ」と直哉が下卑た笑みで真希を見た。
「人の心とかないんか?」
――【炳】筆頭 禪院 直哉
「あぁ。アイツが持ってっちまったからな」
もはや真希の心は微塵も揺らがない。
真依の望みを叶え、約束を果たす――ただそれだけ。
* * *