第5章 心を揺さぶるエレジー【パンダだって/葦を啣む】
「うーい、首尾はどうだい?」
スパンッと障子を開いたのは、【躯倶留隊】の隊長。彼は噸の間の光景に絶句する。次に殺す相手を見つけた真希だったが、直後に呪力の気配を感じて振り返った。
廊下の床に手をついた老人の術式で、真希の足元が崩れ、岩の巨腕に突き上げられる。両手で身体を捕らえられそうになり、真希は一瞬の判断で飛び退いた。
「長寿郎さんの術式……! 【炳(へい)】のお出ましか‼︎」
【炳】――高専資格条件で、準一級以上の実力を認められた者たちで構成される、禪院家最強の術師集団。
鍛え上げられた肉体を惜しげもなく晒した無骨な男――禪院 甚壱。
長い髪を細く結った精悍な顔立ちの青年――禪院 蘭太。
翁の能面のような薄気味悪い笑みを絶やさない小柄なモヒカン頭の老人――禪院 長寿郎。
三人の登場に【躯倶留隊】隊長の表情が引き締まる。
先手――長寿郎の術式により、岩の巨腕が真希を捕えるべく両手を伸ばした。それを躱し、真希は長寿郎と隊長に突進する。
老体とは思えぬ素早い体捌きをものともせず、隊長の刀すら斬りあげていなし、反対に【釈魂刀】で突きを繰り出した。
――ドチュッ! ドチュッ‼︎
呪力の防御すら突破し、真希は長寿郎と【躯倶留隊】隊長の喉を素手で貫く。そのあまりの速さに驚愕しながら、二人の命は途絶えた。
不意に、真希の身体が不自然に強張り、止まる。