第5章 心を揺さぶるエレジー【パンダだって/葦を啣む】
カン、カン、カン、と けたたましい音が禪院家の邸に響き渡る。
「警鐘?」
「なんや、やかましい」
甚壱が顔を上げ、直哉は不快そうに眉を寄せた。二人が事態の確認のため部屋を出ると、そこへ「甚壱さん!」と呼びかける声がある。
「蘭太か」
「真希が乱心しました!」
――【炳】所属 禪院 蘭太
息を切らし、焦った様子で、蘭太は報告を続けた。
「扇さんを殺害! 現在 【躯倶留(くくる)隊】が処理に当たっています‼︎」
【躯倶留隊】――術式を持たない禪院家男児が入隊を義務付けられている部隊で、【炳】の下部組織として、日夜 武芸を叩き込まれる。高専入学直前まで真希も籍を置いていた。
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――禪院家 噸(とん)の間
「いたぞ! 正体不明の呪具を二振り、目視で確認‼︎」
「囲め! 囲めぇ‼︎」
何十人と躯倶留隊の隊員たちに囲まれても、真希の心は凪いでいた。彼らの息遣い、血走った眼、ザッと畳を擦る足音すらはっきりと知覚できた。
「かかれぇ!」
その瞬間、真希は【釈魂刀】を振り上げる。刀で斬りかかってきた男の両腕が落ちた。その背を転がるように乗り上げ、短刀で迫る男の顔面を斬りつける。
【釈魂刀】と【竜骨】を手足のように操り、真希はひたすら刀を振るった。
血飛沫が弾け、唸り声や怒声が飛び交い、人の首や手足が散らばる……目を背けたくなるような凄惨な光景が広がる。