第5章 心を揺さぶるエレジー【パンダだって/葦を啣む】
「真依」
瞼を開くと、そこには光を返さない虚ろな瞳で倒れた半身がいた。
手には、あらゆる物の硬度を無視し、魂を切り裂く事が可能な【釈魂刀】がいつの間にか握られている。
――「これだけは置いてくわ」
「起きて、真依……起きて」
周りにはすでに、呪霊たちがジリジリと迫ってきていた。
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懲罰部屋から出た直後――禪院 扇は振り返った。
呪霊の消滅反応……真希も真依も呪具は持たせていない。
それに、真依は呪力が乏しく、己の【構築術式】でも大したものは作れない。仮にできたとしても、あの傷では何もできないはず。
扇は目を凝らす。そこに立つ存在に、背筋が震えた。
身体が覚えている。忘れるよう努めた、あの――恐怖。
甥である禪院 甚爾の持つ気迫と全く同じ……!
――術式解放【焦眉之赳(しょうびのきゅう)】‼
折れた刀身から炎が渦を巻くようにして、扇の周りに顕現する。
「いいだろう! 今一度この手で! 骨の髄まで焼き尽くしてくれる‼ 来い! 出来損ない‼」
真希は正眼で刀を構え、父の前に立った。
そして――……音もなく、父の顔面を斬る。
感覚が研ぎ澄まされ、室内だというのに、外を飛ぶ鳥の羽音すら聞こえた。
「始めるよ――……真依」
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