第5章 心を揺さぶるエレジー【パンダだって/葦を啣む】
ハッと目が覚めて、一番に気づいたのは波の音。
身体を起こすと目の前では海の波が寄せては返し、すぐ隣には妹の真依が膝を立てて座っていた。
「私の術式、もう大体 分かってるでしょ。でも、大きい物とか複雑な物は作れないのよ」
一方的な話に、真希の頭をついてこない。それなのに、何を考えているのかは何となく分かってしまって……。
「あの人に斬られた傷もあるし、これを作ったら私 死ぬから」
じゃあね。後は一人で頑張んなさい。
まるで他人事のように言って、真依がジャブジャブと海の中へと足を踏み入れる。
「おい! 真依! 待て‼」
大声を上げ、真希は必死で真依を引き止めた。
「何 言ってんだ。とにかく……戻って来い」
あの家に……禪院家に自分たちの居場所を作る。そのために戦ってきた。呪霊が視えなくても、呪力がなくても……それでも たったこの一つの目的のためにやってきたのだ。
そんな真希の呼び止める声に振り返った真依は、酷く静かな視線を返してきた。
「私、随分前から分かってたのよ。何で呪術師にとって双子が凶兆なのか」
何かを得るには何かを差し出さねばならない――これは“縛り”だけの話ではない。
痛い目をみて強くなるのも理屈は同じ。そういった利害が、双子の場合はいちいち成立しない。
なぜなら、一卵性双生児は呪術では 同一人物としてみなされるから。
神ノ原一門の双子も、二卵性である星也と星良は良しとしているが、詞織と詩音は凶兆として幽閉のうえに殺し合いをさせられている。
分かる? と真依の瞳が瞬いた。