第5章 心を揺さぶるエレジー【パンダだって/葦を啣む】
――禪院家
「誰かと思ったわ。酷い面(ツラ)やな。それ、もう治らんやろ。どうすんの? 真希ちゃん」
真希が禪院家を訪れると、窓辺に肘をかけ、直哉がニヤニヤと気味の悪い笑みでこちらを見てきた。
「女を顔で判別できたんだな。尻(ケツ)しか見てねぇと思ったぜ」
「どうすんのって聞いてんねんけど。答えろや、カス。呪術も使えん。呪霊も見えん。取柄のお顔もグズグズ。もう誰も君のこと眼中にないで」
――寂しいなぁ。昔みたいにまたイジメたろか?
脳裏に、修行と称していたぶられたことを思い出す。男女の力の差、大人と子どもの体格差……それを無視して一方的な体術修行――いや、あれは最早 ただの暴力だ。
「どうすんの? 乙骨君と星也君、それに恵君の金魚のフン?」
答えるのも馬鹿らしく、同じくらい虚しくて、真希は直哉に背を向ける。
「なんとか言えや、カス」
それが不快だったのか。眉を寄せる直哉を無視し、その場を立ち去った。
* * *