第5章 心を揺さぶるエレジー【パンダだって/葦を啣む】
その場を去り行くパンダが大声で泣き叫ぶ。
それはいつまでも夜の風の中に響き、ようやく聞こえなくなったところで、ジャリ…と砂利を踏む音が耳に届いた。
メカ丸――与は再び身構える。夜蛾が処刑された。次は自分の番だ。せめて、三輪だけでも逃がさなければ……。
そう思ったものの、楽巌寺はしばらくこちらを見つめ、不意に背を向けた。
「――行け」
「……え?」
虚をつかれ、三輪が思わずといった様子で声を上げる。それは与も同じだった。
規律を重んじる楽巌寺からもたらされたとは思えない言葉。
「早くしろ。夜蛾の遺志を無駄にするな」
「……夜蛾学長が……⁉」
なんで、こんな俺のために……っ!
――「オマエは後悔している。それがオマエに与えられた罰だ。後は正しい道を行けばいい」
夜蛾の言葉を思い出し、与は震える息を吐き出し、パンダの去って行った方向へ頭を下げた。そして、楽巌寺へ背を向けて歩き出す。メカ丸、と三輪も後を追いかけてきた。
「与よ」
楽巌寺に呼ばれ、与は振り返ることなく足を止める。
「夜蛾から、何か聞いていることはあるか?」
何かの確信を持って投げられた疑問に、与は独房で聞かされたことを思い出した。
――天元の結界に守られているパンダの兄弟たちのこと。
状況から見て、楽巌寺は夜蛾から【完全自立型人工呪骸】の製作方法を聞き出している。
確認したいのは、自分が夜蛾からそれを聞いているかどうかだろう。そして、パンダ以外の【呪骸】の所在も。
だが あいにく、夜蛾は製造方法まで明かすことはしなかった。
【完全自立型人工呪骸】を悪用すれば、術師の呪力を消費しない【呪骸】の軍勢を生み出すことすら可能。そんな危険な情報を渡せば、与は今度こそ処刑台まっしぐらだ。