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夢幻泡影②【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第5章 心を揺さぶるエレジー【パンダだって/葦を啣む】


 その場を去り行くパンダが大声で泣き叫ぶ。

 それはいつまでも夜の風の中に響き、ようやく聞こえなくなったところで、ジャリ…と砂利を踏む音が耳に届いた。

 メカ丸――与は再び身構える。夜蛾が処刑された。次は自分の番だ。せめて、三輪だけでも逃がさなければ……。

 そう思ったものの、楽巌寺はしばらくこちらを見つめ、不意に背を向けた。

「――行け」

「……え?」

 虚をつかれ、三輪が思わずといった様子で声を上げる。それは与も同じだった。

 規律を重んじる楽巌寺からもたらされたとは思えない言葉。

「早くしろ。夜蛾の遺志を無駄にするな」

「……夜蛾学長が……⁉」

 なんで、こんな俺のために……っ!


 ――「オマエは後悔している。それがオマエに与えられた罰だ。後は正しい道を行けばいい」


 夜蛾の言葉を思い出し、与は震える息を吐き出し、パンダの去って行った方向へ頭を下げた。そして、楽巌寺へ背を向けて歩き出す。メカ丸、と三輪も後を追いかけてきた。

「与よ」

 楽巌寺に呼ばれ、与は振り返ることなく足を止める。

「夜蛾から、何か聞いていることはあるか?」

 何かの確信を持って投げられた疑問に、与は独房で聞かされたことを思い出した。


 ――天元の結界に守られているパンダの兄弟たちのこと。


 状況から見て、楽巌寺は夜蛾から【完全自立型人工呪骸】の製作方法を聞き出している。
 確認したいのは、自分が夜蛾からそれを聞いているかどうかだろう。そして、パンダ以外の【呪骸】の所在も。

 だが あいにく、夜蛾は製造方法まで明かすことはしなかった。

【完全自立型人工呪骸】を悪用すれば、術師の呪力を消費しない【呪骸】の軍勢を生み出すことすら可能。そんな危険な情報を渡せば、与は今度こそ処刑台まっしぐらだ。
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