【地獄楽】✼••極楽へ至らぬ者たち••✼【R指定】
第15章 ✼••┈••✼至らぬ者②✼••┈••✼
「…奪う方は覚えてないだろう…。」
「…………。」
孤蘭の顔のすぐ横で士遠の拳が強く握られていた。
その手がどう動くか分からないけど、孤蘭 は士遠から目を離さなかった。
「…私の仇はお前の家族の中に居る。どんな事をしても絶対に殺してやる。お前には分からないだろ。家族が殺されてもこんな事をやっているんだから。」
湧き上がる情欲を怒りで抑えているようだった。
手にも血管が浮き出ていて、吐く息はずっと熱いままだ。
苦しそうに顔を歪めるのはどうしようもない体の疼きを我慢しているのだろう。
孤蘭は士遠の言葉を聞いてゆっくり目を閉じた。
一瞬脳裏に牡丹が浮かんで、また目を開ける。
牡丹を殺した男の頬に手を伸ばした。
唇を噛み締めて疼きに我慢しているのか彼の唇から血が流れた。
「…そっか……。」
孤蘭は彼の血を親指で拭うと、目を細めて小さく言った。
「私はあなたのように怒ればよかったのね。」
怒り方も分からなかった。
誰かに仇を討つなんて考えも思い浮かばない。