【地獄楽】✼••極楽へ至らぬ者たち••✼【R指定】
第9章 ✼••┈••✼夫を娶る✼••┈••✼
抱き締められた瞬間に香ってきた匂いがもう違った。
蓮のように蓮の花の匂いもしない。
泥臭くて汗の匂いだ。
なのに抱き締められている腕と、背中に触れる彼の心音は蓬莱で抱かれた誰よりも暖かい。
初めて感じた人間の腕の中だった。
「どうした…まだ俺は聞きたいことがあるんだが?」
そう言ってお腹を締め付けていた手が、孤蘭の胸元、首筋。
そして頬に触れた。
無理矢理弔兵衛の方に顔を向けられると、月明かりの下、片目だけの男の目は獣のように光って見えた。
蓮や他の天仙には見られない眼差し。
正気のこもった強い眼差しだった。
弔兵衛は孤蘭の顎を掬い上げると、その花びらのような唇に口付けをした。
ヌルリとすぐに舌が入ってきて、孤蘭の舌と絡み合った。
唇を何度も付けるうちに、孤蘭の体からスルリと力が抜けていく。
男に捕まり、口付け一つで簡単に腕の中に堕ちていった。
「っ兄さん!!」
弔兵衛のその行動にハッと我に返り声を出したのは桐馬だった。