第10章 四六時中離してくれない。
「……ありがとね。不安だった時期の俺まで、こうやって大事にしてくれて。……でも、これからは、写真の中の俺に『お疲れ様』って言って、今の俺にその熱量ぶつけてよ」
「…………」
「……あーあ。俺、うさみの『推し』になれて、本当に良かったわ」
販売終了に怯え、画面越しに「頑張れ」と祈っていたあの日。
まさかその本人が、目の前でこんなに優しい顔をして、自分のオタク趣味を肯定してくれるなんて。
「……大好き……。ステッカー、やっぱり使えないけど……大好き……」
「使えよ!」
結局、オタクな彼女に振り回されながらも、拓人はそんな彼女の「愛の深さ」に、改めて深く沈んでいくのだった。
「……うさみ。スマホ貸して」
拓人が、テーブルに置いてあった(なまえ)のスマホを手に取った。透明なケースの背面には、センス良く配置されたステッカーが見える。
「お、timeleszのアリーナのやつ。これ、俺らも気に入ってるんだよね。……あ、あとこれ… (なまえ)本当に好きだよね」
そこにはtimeleszのステッカーと並んで某ロックバンドのロゴステッカーが主張していた。メディア露出は多くないけど、名実ともに評価の高いグローバルなバンド。
「……あ、うん。……なんか、私の人生の支え、みたいな」
(なまえ)が少し照れくさそうに答えると、拓人はふん、と鼻を鳴らした。
憧れのバンドへの敬意はありつつも、「今の(なまえ)を支えているのは俺でありたい」という彼氏としての小さなエゴが顔を出す。
「……これ、ちょっと位置ずらしていい?」
「え、何するの?」
拓人は器用にケースを外すと、さっきクローゼットで見つけた「俺のこだわりステッカー」を取り出した。