第10章 四六時中離してくれない。
「……あ、これ……」
拓人が、クローゼットの奥に押し込まれていた小さな箱を見つけてしまった。
中には、ビニールも剥がされていない、timelesz加入前の「寺西拓人」の公式アクスタと、数枚のオフショット。そして、彼がこだわり抜いて作った、あの例のステッカーが、なぜか2セット。
「……うさみサン。これ、何?」
ニヤニヤとうさみの方を見る拓人。
「あぁぁぁぁ! 触らないで! それは私の家宝!!」
うさみがキッチンから猛スピードで滑り込んできたが、時すでに遅し。拓人の手には、ギラギラと野心を燃やしていた頃の自分のアクスタが握られていた。
「これ……販売終了のアナウンス出た日の夜に、俺が事務所で『あー、終わりかー』って思ってたやつじゃん。……え、うさみこれ買ったの?」
「買ったよ! ……というか、返して! 脂がつく!」
「俺、本物なんだけど。脂って何だよ」
拓人は爆笑しながらも、箱の底にあるステッカーを見つけて、動きを止めた。
「……これ、ステッカー。2セットもある。……予備用?」
「違うよ。1セットは保存用。もう1セットは、万が一のことがあった時のための予備の保存用」
「使う用がないじゃん!」
拓人はソファに座り込み、1年前の自分の写真を一枚一枚眺め始めた。
そこには、自分が必死に戦っていた日々の記録を、一人の女性が「自分の知らない場所で」必死に守り、大切に保管してくれていたという、動かしがたい事実があった。
「……ねえ、うさみ」
「……何。キモいって思ってもいいけど、これは私の『自担』への礼儀なの」
うさみが少し拗ねたように顔を背けると、拓人はその腕を引いて、自分の隣に座らせた。
そして、2セットあるステッカーのうち、1セットをうさみのスマホの裏にそっと添えた。
「……これさ、1セット使いなよ」
「えっ、無理。劣化する」
「いいんだよ。俺がまた、新しいのいくらでも作ってやるから。……それより、うさみ持ち物に、俺のこだわりを入れといてほしい」
拓人は、大切に保管されていた「過去の自分」を箱に戻すと、うさみの肩を抱き寄せた。