第1章 彼氏は自担です。
「……そんなに喜ぶとは思わなかった」
ふっと視線を逸らしながら、うさみは熱くなった頬を隠すように呟いた。
名前を呼んだだけでこんなに子供みたいに、でも同時に猛獣みたいな顔をして喜ぶなんて。
「……計算外。てら……じゃなくて、拓人って、そんなに単純だったっけ」
少しだけ大人な余裕を取り戻したふりをして、茶化すように笑ってみる。
けれど、拓人はその「余裕」を逃がしてはくれなかった。
「単純だよ。好きな女からの呼び方が変わって、冷静でいられるほど大人じゃないから」
拓人はうさみの腰を抱き寄せたまま、わざと意地悪に口角を上げる。
その表情は、ステージで見せる完璧な笑顔とは違う、生々しい熱を帯びた「男」の顔だ。
「そんなに意外? うさみが俺を『寺西拓人』っていう虚像じゃなくて、ただの男として受け入れてくれたのが、どれだけ自信になるか……わかってないでしょ」
彼はうさみの耳たぶを甘噛みするように食むと、ゾクッとするほど低い声で言葉を継いだ。
「19年、俺がこの世界で何を守ってきたと思ってんの。……誰にも触らせない、誰にも見せない場所を作って、そこにうさみを招いたんだよ。名前一つ呼んでもらうのに、俺がどれだけ我慢してたか、今からたっぷり教えてやる」
「……っ、拓人、」
呼び慣れない名前をもう一度呼ぶと、彼の動きが止まる。
そして、今度はさっきよりもずっと深く、逃げ場を奪うような重い接吻が降ってきた。
「……そう。その声。もう、離さねーから」
彼の手が、うさみのブラウスの裾にゆっくりと伸びる。
長く働いて、自分の足で立ってきた大人同士。
でも、今この瞬間だけは、積み上げてきたキャリアも、プライドも、年齢の差も、すべてが拓人の熱によって溶かされ、ただの「うさみ」へと剥き出しにされていく。
「……明日、休みでよかったね」
拓人は唇を離すと、蕩けたような瞳でうさみを見つめ、挑発するように笑った。
その視線は、仕事のミスで落ち込んでいたことなんて一瞬で忘れさせてしまうほど、強烈で、独占的な愛に満ちていた。
end...
てらって19年目なんよだね…!
今後もてらって言っちゃうから。
次は誕生日+カウコン