第4章 面倒な彼の要求。
「……え、ちょっと、何その距離」
「……いや。……俺みたいな『完成しちゃってる』やつより、伸び代がある若手の話をしてる方が、うさみは楽しいのかなって思って。……邪魔しちゃ悪いだろ?」
「……それ、拗ねてるよね」
うさみが苦笑して顔を覗き込むと、拓人はふいっと視線を逸らした。
31歳の男がムキになるのは格好悪いと分かっている。分かっているけれど、仕事でもプライベートでも一番認めてほしい相手が、目の前で「別の男」に感銘を受けている事実に、胸の奥がチリりと焼ける。
「……拗ねてない。ただ、少しだけ『あぁ、俺の今の100点よりも、大輝が今日出した80点の方が、うさみには響くんだな』って、客観的に分析してただけ」
「……それ、一番めんどくさい拗ね方!」
「めんどくさくて結構。……俺だって、30過ぎて、今更がむしゃらな成長なんて見せられないけど。……でも、うさみにだけは、いつだって俺が一番だって思わせてたいんだけどな」
拓人はそう言うと、ようやくうさみの方を向き、少しだけ寂しそうな、でも色気のある瞳で彼女を射抜いた。
「……大輝のダンスが上手くなったのは、確かに嬉しいよ。……でも、それについて語るうさみの顔は、俺がいない場所でやって。俺の隣にいる時は、俺のことだけで頭いっぱいにしててくれればいい」
彼はそう言って、自分から作ったはずの距離を自ら詰め、うさみの首筋に腕を回して引き寄せた。
「……わかった? ……俺、結構プライド高いんだよ。……特に、おまえに関することなら、世界一」
低く、落ち着いた声。でもそこには、若さゆえの爆発とは違う、大人の男の「静かな独占欲」が宿っていた。
「……ごめんね。拓人のダンスが一番かっこよかった。……それはもう、前提すぎて言わなかっただけ」
「……前提で済ますなよ……言葉にしてくれないと、俺、また明日からしのに厳しく当たっちゃうかもな」
「最悪な先輩!」
「あはは、……ほら、お詫びに、さっきのターンのどこが良かったか、140字以内でプレゼンして」
大人の余裕を装いながらも、最後にはしっかり自分への称賛を要求してくる。
そんな拓人の可愛らしいプライドに、うさみは降参するしかなかった。
end...
こんな妬き方するかな…笑