第2章 お手振り王子の誕生日。
拓人はソファに深くもたれかかり、唇を尖らせて不貞腐れている。
うさみはそんな彼にすぐには近づかず、少し離れた場所に立ったまま、改めて彼をじっくりと眺めた。
チャコールグレーのルームウェア。長身の拓人が着て、少し袖が余るくらいのゆったりとしたサイズ感。
だらりとソファに座るその姿は、どこか大型犬が拗ねているようでもあり、同時に、驚くほど画になっていた。
「……ふふ。やっぱりそのルームウェア、正解だった。すごく似合うね。……うん、かっこいいよ、拓人」
不意に投げられたストレートな言葉に、拓人は毒気を抜かれたように瞬きをした。
ジト目が少しだけ和らぎ、照れ隠しのように視線を泳がせる。
「……今さら褒めたって遅いから。俺、結構根に持つタイプだよ」
「そう? じゃあ、そのかっこいい姿をもう少しだけ眺めてから、隣に戻ろうかな」
うさみがマグカップを手に微笑むと、拓人は「……早く来いよ」と、自分の隣のスペースを無言で叩いた。
口では文句を言いながらも、うさみの言葉一つで結局は機嫌を直してしまう。
19年という月日をお互いに別の場所で戦ってきた二人。
出会ってまだ半年ちょっと。
「てら」というアイドルを誰よりも尊敬しているうさみと、その彼女にだけは「世界で一番」だと思われていたい拓人。
深夜4時のリビング。
新しい年の始まりに、二人の笑い声が静かに溶けていった。
end...