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【呪術廻戦】誰も知らない

第13章 私の名


「…少しの間、こちらを見ないでいただいてもよろしいでしょうか?」

脹相は何も言わずに顔を背けた。
血の乗った脹相の指を見つめる。
小さく息を吐き、「失礼します」と言うと指についた血を舐め取った。
脹相は驚き、勢いよくこちらを振り向く。
「失礼しました!」とすぐさま舌を這わせたところを布巾で過剰に拭く。
脹相の血は人間と同じ鉄の味なのに、乗せた舌はビリビリと痺れた。
飲み下せば通ったところから熱を帯びる。
明らかに身体は拒絶しているが、それも時間の問題のようで少しずつ受け入れていく。
その感覚が消える前に脹相の気配と結びつけるイメージ。
すると、脹相の気配がより鮮明になった。
それと同じ感覚は脹相にもあったようで驚いたようにこちらを見ている。

「頭の中で私に話しかけてみてください」

〝八重〟

すぐさま頭の中に脹相の声が響く。
まだ名前で呼ばれるのに慣れてもいないのに、頭に直接それを受け取るのは破壊力が抜群だ。
八重の反応が途絶える。

〝八重〟

〝八重〟

その間も脹相は八重の名前を連呼している。
そのうち八重の気持ちが一杯一杯になる。

「もう!」

思わず声が大きくなってしまった。
それに八重自身が驚き、一度息をつく。
そうして、いつもの調子に整えると「…もう伝わっています」と言った。

「〝繋がり〟で話しかけられるのは不思議な感覚ですね…」

「だから言っただろう」

「少しずつ慣れていきます」

「そうしろ」

脹相は「悠仁を待たせている」と言ってドアに向かって歩を進める。
数歩進むと「あぁ」と何かを思い出したかのように振り向いた。

「俺は八重と呼ぶからお前もさん付けはやめろ。敬語もだ」

「え…」

「呼んでみろ」

「……脹相…さん」

目を逸らす。

「脹相、だ」

「脹相………さん」

顔を背ける。

「……」

脹相のプレッシャーが痛い。

「……脹相(小声)」

それを聞くと満足そうに部屋を後にした。

〝行ってくる、八重〟

優しく響く。

〝いってらっしゃいませ……脹相〟

〝敬語〟

〝……〟

場所は離れてもしっかり繋がっている。
それを感じながらそれぞれのやるべきことへと向かっていった。
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