第21章 繋縛
「……はい、本心です……しかし、この力…誰彼構わず使っているわけではないということだけは、どうかわかってください…」
事実、力は未だかつて自らの意思としては九相図関係でしか使っていない。
八重だって与えられた力が、おいそれと使えるものではないことくらい重々承知している。
脹相だから使っているのだということをはっきり言うことはできず、どうかそれで察してほしかった。
それが通じたのか脹相はまたしばらく黙った。
そして、「その力はもう使うな」と冷たく言い放った。
臓腑が、冷たくなっていく感覚。
「……それは…お約束、したくありません」
「誓え」
「…私には…そんなことくらいしかできません」
〝これ以上、お前の負担にはなりたくない…!〟
「負担だなんて…!」
そう八重が口にして驚いたようにこちらを振り向く脹相を見て初めて、先程の脹相の声が〝繋がり〟による思考の漏れであることに気付いた。
咄嗟に「…すみません」と謝りを入れると、こちらを向いている脹相に八重も向き直った。
「…私はあなたに力を使うことを負担だなんて思いません。戦うこともできず、癒やすこともできない…それでも、あなたの痛みは感じるから…何もせずにはいられないのです」
八重は精一杯の誠意をもって伝えているつもりだ。
それなのに言葉を紡げば紡ぐほど、脹相は苦しそうに奥歯を噛み締める。
何がそんなに脹相を苦しめているのかがわからず、八重はその苦しみに寄り添えない。
「…お前に…そんな力は必要ない」
「え…?」
ボソリと呟かれた言葉が耳に入っても理解ができなくて聞き返してしまう。
「…お前はそんな人間離れした力を使わなくても、充分周りを支えられる人間だ。自覚しろ。自信を持て。人間であることを手放すな。俺は永遠なんて信じていない。お前はきっといつか人として死ねる。だから、それまで、人として生きろ」
脹相が今までこんなにも力強く、気持ちをぶつけてくれたことがあっただろうか。
この気持ちだけを胸に抱いて生きていけたらどんな素敵だろうと八重は思う。
でも、それはその言葉をくれた本人がいてこそのものだ。
その脹相は昨日、死ぬ覚悟をしていることを八重は知っている。
だから、八重は両手放しで気持ちを受け取ることが出来ないのだ。