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白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】

第2章 ● 想いが通い合う短い逢瀬 ◯


 帰宅した緒方は、自宅のソファでスマホを握る。深呼吸して星歌へのメッセージを打つ。 
「もう遅いけど、少しでいいから顔を見たい。星歌の家の近くの公園で会えないか?」
 星歌からの返信はすぐ来た。
「どうしたの?急でびっくりしたけれど嬉しい。今から公園に行くね」
 星歌の「嬉しい」に緒方の顔がゆるむ。緒方はジャケットを羽織り、星歌のマンション近くの小さな公園へ急ぐ。
 
 22時少し前、公園の灯の下で星歌が少し緊張した笑顔で待っている。桜の木は花を散らして新緑が芽吹き、春の夜風がそよぐ。
「精次さん、急にどうしたの?」 
「いや、しばらく会えてないから顔を見たかった。それに、星歌の顔見たら勝てそうだと思った」
 緒方は照れながら言う。星歌は微笑んで頬をピンクに染めている。
 2人でベンチに並んで座り、緒方がコンビニで買ってきたお茶を分け合う。星歌は新しいクラスや担任のことなどを楽しげに話す。新入生のための部活動紹介では囲碁部の実績が大々的にアピールされてすごかった、と笑う。何気ない雑談で十段戦への緊張が解れ、心があたたまるのを緒方は実感する。この子をもっと大切にしたい、いや、大切にしなくては…。そんな気持ちが高まる。
 緒方が肩をそっと抱くと星歌は、少し緊張した様子ながらも、頭をそっともたれかけてくる。星歌の髪からシャンプーの花のような香りが漂い、思わず緒方はドキリとする。
「十段戦が終わったら、また2人でどこかに行こう」
「うん、楽しみ」
 緒方の提案に星歌の声が一段と明るくなる。
「十段戦、いい碁を打てるといいね」    
「…いい碁…か。そうだな」
 勝ってと言わないのは星歌の優しさだろう。でも、この笑顔があれば塔矢先生にも勝てる。そんな気がする。オレは先生を倒してタイトルを獲る…。緒方は決意を新たにしていた。
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