• テキストサイズ

白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】

第20章 ● 赤ちゃんができた ○


 緒方がカフェを訪れると、カウンターの奥では、星歌が目を輝かせてマスターに話をしていた。
「ね!すごいですよね!」
 寡黙で感情を露わにしないマスターが、珍しく穏やかな笑顔で頷いている。…あのマスターがあんな顔をするなんて、初めて見たような気がするな…。星歌の笑顔は、見ているほうも笑顔にさせられるよな。緒方は感心しながら、いつもの席に腰を下ろす。
「何がすごいんだ?」
 何気なく問うと、星歌が弾むような笑顔で答える。
「あのね、赤ちゃんができたの!」
 その瞬間、緒方の胸の奥に、雷が落ちたような衝撃が走った。
「…赤ちゃんが、できた…?」
「おい、緒方!どうするんだよ?」
 真剣な表情の緒方に、白川は強い口調で言う。
「…ま、待て、オレじゃない…」
「…え?」
 2人は顔を見合わせて黙りこくる。
「…じゃあ、誰だ…?」
 緒方は咳払いをしてから、できる限り落ち着いた声で星歌に尋ねた。
「星歌…誰に、赤ちゃんができたんだ?」
 星歌はその問いにきょとんとするが、すぐに笑顔になって言う。
「ん…?猫のミケちゃん!」
 奥のテーブル席からは、一部始終を見ていた客の小さな笑い声が聞こえる。…あの声は…編集部のヤツらだな…またネタ帳に書き留められるのか…?と、緒方は苦笑い。
 白川は椅子に座り直して、安心したように言う。
「…猫…ミケちゃん…。なんだ、オレ、てっきり星歌ちゃんがデキちゃったのかと…」
 星歌はクスクスと笑う。
「そんなこと、あるはずないですよ〜」
 それを聞き、白川の目がイタズラっぽく細まった。
「なんで?」
「え?『なんで?』?」
 星歌が首を傾げる。
「うん、なんで?」
「え…。なんでって…」
 星歌が戸惑うのを見て、緒方は静かに、だがはっきりと口を挟んだ。
「白川、変なこと聞くな」
「はいはい」
 白川は肩をすくめ、笑いを堪えた。
/ 83ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp