白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】
第19章 ○ 推薦入試 ●
星歌の推薦入試当日。緒方は対局には集中できているが、ふとした瞬間に星歌のことを思いだしてしまっている。幸いにも今日の対局相手はだいぶ格下の相手であり、このまま大きなミスさえなければ勝てそうではある。それでも、自分の集中力は案外と脆いものであったな…と、内心で苦笑いをする。
昼休憩に、白川が肩を叩いてくる。
「どうした?妙にソワソワしてるぞ?」
「今日は…星歌の推薦入試だ」
白川が目を丸くした。
「もうそんな時期か。まァ、あの子なら大丈夫だろ」
そう言われても、胸のざわめきは収まらない。
よほどのことがない限り落ちることはないと、保護者代わりの一柳棋聖から話を聞いていた。それでも、星歌が緊張している姿を想像すると、こちらまで胃が痛くなる。
対局が終わり、談話室でスマホを開くと、画面には星歌からのメッセージ。
「無事に終わったよ!一度学校に戻ってから、いつも通りバイトに行くね」
安堵の息が漏れ、すぐに返信を打った。
「お疲れさま。終わってよかった。無理しないでな。待ってる」
対局室で白川や他の棋士たちと検討をして時間を潰す。外からは時折、賑やかな宣伝カーやヘリコプターの飛ぶ音が聞こえる。しばらくして救急車のサイレンが鋭く通りすぎた直後、院生たちの声が廊下に響く。
「さっきの事故、ヤバかったよな」
「被害者、女子高生だって」
緒方の胸の奥にズキンと痛みが走る。
まさか、星歌じゃないよな…?時計を見る。いつもなら、もうすぐ着く時間だ。スマホを開くと、緒方が送ったメッセージは既読になっている。星歌から新しく送られてきたメッセージはない。
不安な心を落ち着かせるように立ち上がり、エレベーターで1階へと降りる。ロビーのガラス越しに、外の通りを見張る。いつも星歌が歩いてくる道には、まだ姿がない。
「今、どこにいる?」
緒方は震える指でメッセージを打った。