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白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】

第16章 ● 深まる秋と2人の想い ○


 棋院の談話室では、年配の棋士たちが、缶コーヒーを片手に声を潜めている。
「若手トップが女子高生好きなんて、世間にバレたら囲碁のイメージが悪くなるぞ」
「いつも制服着せてプレイしてるのかな」
「卒業したらポイ捨てだろ?」
「棋聖の姪だから、甘やかされて世間知らずっぽいもんな」
 扉の向こうで全てを聞いていた緒方の手が、わずかに震えた。…メチャクチャなことを言いやがって…。はらわたが煮え繰り返る…そんな気持ちだ。だが、相手は自分より20~30歳は年上の先生たち、口を開けば「若造が生意気だ」とさらに火に油を注ぐだけ。星歌に変な噂が飛び火するのも嫌だ。だから、深呼吸をして静かに踵を返した。
 廊下を歩いていると、向かいから白川が歩いてくる。
「どうした?」
「談話室でジジイどもに噂されていた」
「御器曽先生たちか?あんなジジイども放っておけよ。お前が星歌ちゃんと幸せなら、それでいいだろ。御器曽先生は株で大損してイラついてるらしいから、碁も恋愛も順調なお前に僻んでるんだよ。…それともオレが一発ぶちかましてやろうか?」
 軽く腕まくりをする白川の姿に、緒方は思わず小さく笑った。自分の味方がいる。それだけで、胸のモヤモヤが少し薄れる。碁一筋で恋愛も友情も二の次だったオレに、星歌という恋人と同期の白川がいる。確かにそれで十分だ。
 
 週末の緒方家。
 新しいマグカップで紅茶を飲んでいる星歌に、緒方は問う。
「最近、誰かに変なこと言われてないか?」
「…変なこと?言われてないけど…また誰か噂してるの?」
 緒方は、不安げな表情の星歌の頭を軽く引き寄せた。
「オレが、星歌を最愛の人って言い切ったから、僻んでるジジイがいる」
 星歌の頬がうっすらと色づく。
「…うん」
 緒方は星歌の手を取り、ジッと目を見て言う。
「噂なんてどうでもいい。オレはずっと星歌の隣にいる。誰が何と言おうと、変える気はない」
「うん、私も」
 談話室の声もこの家までは届かない。ここはまるで2人だけの世界のようだと、緒方には思えた。
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