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白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】

第16章 ● 深まる秋と2人の想い ○


 家で星歌と2人で過ごす時間が長くなるにつれ、「皿が足りない」「ボウルがもう一つ欲しい」という会話が増えてきていた。
 休日の午後、2人で雑貨屋へと向かう。食器売り場でシンプルな白い大皿や深めのボウルをいくつか選んだあとに星歌が目を留めたのは、マグカップコーナー。
「星歌用のマグも買うか?」
「いいの?」
 緒方が尋ねると星歌は嬉しそうに、だが少し遠慮がちに答えた。
「ああ、もちろん」
 自宅に星歌のマグカップを置くという事実に、緒方の頬がゆるむ。
 星歌は真剣な顔で、棚に並ぶマグカップを見比べている。ときどき手に持ったり反対側から見たりして、やがて1つの商品を選ぶ。
「これにする!」
 その笑顔が愛らしく、緒方も思わず微笑む。マグカップの近くには箸のコーナー。
「箸も買おう」
「うん」
 緒方が提案すると、星歌は笑顔で頷く。先ほどのマグカップのように熱心に見比べていたと思ったら、プレゼント用のボックスに入った箸を見ながら星歌が恥ずかしげに言う。
「せっかくだから…… お揃いにしよう?」
 …お揃いの箸。夫婦箸…夫婦…。緒方の頭の中に「夫婦」という単語が浮かび、顔が熱くなる。
「…ああ」
 声が裏返らないよう、必死で平静を装う。
 結局、夫婦仕様の2膳の塗り箸と箸置きをかごに追加した。
 スーパーで食材を買い足してから帰宅すると、星歌は慣れた手つきで冷蔵庫に肉や野菜をしまい、食器棚の中身を整えていく。
 緒方はその横で紅茶を淹れる。緒方と星歌、2人のマグカップが並んでいる。テーブルには今日買った2膳の箸と2つの箸置きが見える。どれもただの食器かもしれないが、一人暮らしのこの家が2人用へと少しずつ変わっていると感じる。こんな幸せな感覚は初めてだな…。緒方の胸の奥は、じんわりとあたたかくなっていた。
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