白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】
第13章 ○ 秋の入口は波乱の予感 ●
人気イタリアンレストランでは、白川の「大人のおもちゃ事件」の「お詫び」と称した食事券のおかげで、緒方と星歌が至福のディナーを楽しんでいる。カルパッチョに手打ちパスタ、メインディッシュ、デザートはティラミス。星歌はどの料理もおいしそうに食べる。
「…白川に感謝…すべきなのか…?」
緒方は苦笑い。
レジ前で会計を済ませると、突然、背後から声をかけられた。
「緒方くん、久しぶり」
聞き覚えのある、艶やかな女性の声。振り返ると、そこに立っていたのは、以前、定期的に会っていた女性だった。
彼女は黒のワンピース姿で、変わらぬ大人の色気を漂わせながら微笑む。
「まさか、こんなところで会うなんてね」
緒方の肩が、ピクリと強張る。
星歌は、緒方と彼女を交互に見る。
「…ああ、そうだな…」
緒方は短く応える。
彼女は星歌に視線を移し、ニコリと笑う。
「もしかして、噂のネクタイピンの彼女かしら?ずいぶん若いのね」
…何か余計なことを言うんじゃないだろうな…?と、緒方の緊張が高まるが、きっぱりと言いきる。
「ああ、オレの最愛の人だ」
星歌は頬を赤くしながら恥ずかしそうに俯く。
「かわいい子ね。緒方くん、幸せそう」
緒方は星歌の手を取り、歩きだす。
「それじゃ、失礼するよ」
「さようなら、緒方くん」
緒方は振り返ることもなく、まっすぐ歩いた。
店を出ると、生暖かい夜風が2人を包む。
星歌は少し不安そうに、緒方に聞く。
「…あの人、誰?」
緒方は星歌の肩を抱き、静かに答える。
「ただの知り合いだ」
「…うん…」
星歌は、静かに小さく頷く。
街灯の光が、2人を優しく包み込んでいる。
…あの女とは、お互いにただの遊びだった。今も未来も、オレには星歌だけだ…。緒方の胸中では、星歌への想いが一段と大きくなっていた。