白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】
第10章 ● 碁聖獲得 ○
碁聖戦5番勝負、緒方vs乃木。第5局を緒方が制して、碁聖を獲得した。胸元のネクタイピンは星歌の想いとともに輝き、緒方は碁聖と十段の2冠棋士になった。
週末の緒方家のリビングのソファで星歌は、緒方の隣に座っている。
「…精次さん…ご褒美、何?」
緒方はマグカップを置いて答える。
「映画と同じように、星歌のキスをもらおうか」
星歌は小さく頷いてから、恥ずかしそうに目を閉じた。緒方はいつもより長く唇を重ねる。ゆっくり唇を離すと、星歌は頬を真っ赤に染めて俯く。
緒方は星歌の耳元で囁いた。
「ご褒美だから…大人のキス、してもいいか?」
「オトナの……?」
ポカンとした声で聞き返されて、緒方は内心で、星歌にはまだ早かったか?と焦りを覚える。だが、そんな思いは隠して静かに答える。
「ああ」
数秒の沈黙。星歌はようやく意味を理解したのか、俯いて小さな声で呟いた。
「…やり方、分かんない…」
緒方は星歌の頬にそっと手を添えた。
「大丈夫」
再び唇を重ねる。今度は、深く、深く。舌先がそっと触れ、息が絡まる。2人のぬくもりが溶け合っていくようだ。手を星歌の頬から肩へ、そして背中へ移して抱きしめる。
最初は驚いたように身を強張らせていた星歌も、しばらくすると緒方の背にそっと手を回した。
長いキスが終わると、星歌の目は潤んでいた。そっと俯くが、その表情は蕩け切ったように甘く、緒方の胸が熱く高鳴った。…こんな顔をされると理性が保てなくなる。だが、これ以上はまだダメだ。星歌のペースを乱してはいけない。
緒方は視線を逸らし、気持ちを紛らわせようとした。リビングのカレンダーに目が留まる。まだ8月。星歌が高校を卒業するのは、3月。それまで…待てるのか?少しだけ自信が揺らぐ。
星歌は小さく震える声で緒方に問う。
「ちゃんと…ご褒美に、なった…?」
「ああ。2冠より嬉しいな」
「…よかった…」
その素直な答えに愛しさが募り、星歌の頭をそっと撫でた
大丈夫だ、星歌のペースでいい。あらためて、そう思うことができた。