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白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】

第1章 ◯ 十段戦とネクタイピン ●


 4月中旬、十段戦第4局当日。緒方は鏡の前でネクタイを締め、星歌が贈ったネクタイピンを手に持つ。
 今日こそ着けるぞ…。碁石のようなデザインを見つめ、星歌がオレのために選んでくれたんだ、何を言われても堂々としてりゃいいんだと、自分を鼓舞する。5番勝負を3局終えて2勝1敗、あと1勝で十段獲得だ。今日、オレの碁で決めると、闘志を燃やしている。
 ネクタイピンをそっと留め、悪くないなとニヤリとするが、頬が熱い。
 対局室に向かう途中、エレベーターで星歌の伯父である一柳棋聖と鉢合わせる。…一柳先生、どうしてここに…?星歌との関係は許可をもらったが、このネクタイピンを着けているときに顔を合わせるのは気恥しい…緒方はわずかに動揺する。
「おはよう、緒方くん、緊張してるのかい?顔が少し赤いよ?」
「おはようございます、一柳先生。別に緊張はしていません。…先生、わざわざここまでいらしたんですか?」
「そりゃキミの応援に来たんだよ、決まってるだろ!星歌も喜ぶだろうからな。相手が師匠だからって気負うなよ?」
「はい、塔矢先生の胸をお借りして頑張ります」
 ネクタイピンのことは気づかれていないようだな…と緒方がホッとしたのも束の間、一柳がニヤリとする。
「しゃれたの着けてるね?もしかして星歌から?」
「あ、これは、その…」
 動揺した緒方はしどろもどろ。
「惚れた女からのプレゼントをお守りみたいに着けるなんてこと、緒方くんもするんだね。こりゃ、いいもの見せてもらった」
 一柳は笑いながらエレベーターを降りる。何を言われても堂々としているつもりだったが、思っていた以上に恥ずかしいぞ…と緒方は、ネクタイピンを外してポケットに収めた。
 対局室に入ると、タイトル戦らしい独特の空気感が漂う。幽玄の間とは少し雰囲気は異なるが、緊張感があり、緒方は思わず姿勢を正す。さっきは動揺したが大丈夫だ、オレはいける…ひそかに気合を入れていた。
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