白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】
第7章 ○ 未来を色づけていく、初夏 ●
7月初旬、午後の日差しはすでに夏の色を帯びている。
緒方は近所のコンビニへと向かう。店の前では、派手なネイルと長いつけまつ毛が印象的な女子高生3人組が、週刊誌を広げて身を寄せ合っている。ページは「夏のロストバージン特集」。生々しい見出しが太陽の光に映えて踊る。
「絶対痛いよね…」
「デキちゃったらどうするの?」
「ゴム着ければ平気だよ!先輩が言ってた」
恥ずかしげもなく繰り広げられる会話に、緒方は苦笑いを浮かべる。…同じ女子高生でも、星歌とは正反対だな。
紫陽花デートでの星歌の横顔が、ふと脳裏をよぎる。雨に濡れた髪、赤い頬…。人目を忍んでそっとキスを落としたときの恥じらうような笑顔。…あの柔らかな微笑みの裏で、星歌もこんなこと…少しは考えるのだろうか?そう思った瞬間、胸の奥がざわついた。…いや、星歌はそんな子ではない。今日だって校内模試があると言っていたし、夏休み明けのテストは入試にも関わるからと、熱心に勉強しているだろ?受験生の星歌にとって、この夏は大事なときだ…。
そう自分に言い聞かせながらも、夏の訪れが心に小さな波紋を広げていく。…星歌が望むならオレだって、したくないわけではない。…いや、したい…。だが、まだ早すぎるだろ…星歌は高校生だぞ?唇が軽く触れるだけのキスですら、あんなに恥ずかしがっていると言うのに…。「在学中に妊娠なんかさせるなよ?」と凄んだ一柳棋聖の顔も思いだされる。…焦るな、あの子のペースに合わせるんだ。
レジで支払いを済ませて店を出ると、3人組はまだ熱心にページをめくっていた。緒方はキャップを深く被り直す。
星歌、キミはオレの最愛の人だ。夏が来ても、変わらない。ざわめきは遠ざかっていく。だが、胸の奥の波紋は、静かに、確かに残っていた。