白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】
第5章 ○ 赤い糸で結ばれる公認カップル ●
ゴールデンウィークの囲碁イベントの準備で、多くの棋士が棋院に集まっている。談話室では、打ち合わせを終えた何人かの若手がコーヒーを片手に雑談に花を咲かせている。
「今度はガチで間違いないって。車に2人で乗ってたって、目撃情報が3件も上がってる」
「オレも聞いた!しかも十段獲る直前から急接近らしいじゃん。狙ってたのかな?すげえ嗅覚だよな」
「緒方先生も女子高生にイチコロ?」
「あの子とヤレば運が上がるってことか?あげまんってヤツ?あー、オレもヤリたいな」
真柴が少し大きな声で言った直後、緒方と白川が談話室に入ってきた。
若手たちは息を飲み、コーヒーカップをテーブルに置くが、真柴からは死角になっているため、気づかず話し続けている。
「海王の制服で『先生』なんて言われたら、たまんねーよな。その上タイトルも…」
「真柴」
緒方の低く冷たい声が耳に入り、真柴がゆっくり振り返る。
「今、何と言った?」
「い、いや、別に…」
「『ヤリたい』だと?星歌を侮辱するな!」
緒方の声が談話室に響き渡る。
若手たちは完全に固まり、白川が「緒方、ちょっと待てよ」と腕をつかもうとするが、緒方は振り払う。
「オレの恋人をお前の欲望の対象にするな。星歌はオレの最愛の人だ。今後、下品な言葉を吐いたら、二度と碁を打てないようにしてやる!」
「す、す、すみませんでした!冗談です!本当に!」
真柴の顔面は青ざめ、土下座寸前に頭を低くしている。
「はいはい、十段の威厳は十分見せつけただろ。もう落ち着け」
白川が仲裁に入ってその場は収まるが、通りかかった座間王座が隣の一柳棋聖に問う。
「2人、やっぱりいい仲なの?」
「付き合ってんだよ。オレが伯父として認めてるよ」
一柳は天気の話でもしているかのように、あっさりと肯定した。
「…やっぱり、もうバレバレだったよな」
白川はひたいを押さえて苦笑いしながら呟く。
緒方は深く息を吐く。星歌が知ったら動揺するかな…と一瞬不安がよぎるが、オレは星歌を汚い噂から守ったんだ…と胸を張る。
この一件で、2人の交際は棋院内で一気に知れ渡る。その事実を星歌は、まだ知らずにいた。