白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】
第4章 ● ハッピー緒方ブームとおうちデート ○
時計を見ると21時を回っている。…あまり遅くなるとまずい、そろそろ星歌を帰さないとな…と、緒方は名残惜しくも声を掛ける。
「星歌、送るぞ」
「ハッピー緒方ってバレたら大変だし…私、1人で大丈夫だよ?」
「暗いんだから、そんな訳にはいかないだろ。バレてもいい。星歌はオレが守る」
「…うん、ありがとう」
頬を染めて微笑む星歌を見て、緒方も思わず笑みを浮かべる。
2人で手を繋いで歩くと、春の夜風が心地よい。
「ねえ、精次さん、今度、何か作って持ってきてもいい?」
「ん?いいぞ。何作るんだ?」
「うーん、サラダとか、お菓子とか?精次さんに食べてほしいな」
星歌は楽しそうに答えるが、スーパーの会計をオレが全部払ったから気にしているか?と、緒方はチラッと思いだす。高校生がそんなこと気にしなくていいのにな…。でも、こういう気遣いは星歌の長所だな…。緒方は内心でほくそ笑む。
「星歌の作るものなら、何でも美味いだろうな、楽しみだ」
「じゃあ、がんばって作るね!」
星歌のこの純粋さが、オレの宝物だ…と、緒方の胸があたたまる。
「精次さん、ありがとう。気をつけて帰ってね」
「ああ、おやすみ」
名残惜しそうに言う星歌の頭をそっと撫でた。星歌がオートロックの向こうに消えるのを見届けながら、この時間がずっと続けばいいのにと、緒方は強く思う。
家に戻る途中、ポケットの中でスマホが震える。画面を見ると、以前定期的に会っていた女性からのメッセージ。
「今何してる?」
…こんな女、オレにはもう不要だ…と返信もせず、すぐにメッセージと連絡先を削除した。オレには星歌さえいればいい…。ハッピー緒方と騒がれても星歌との時間は絶対守ると、決意を固めながら家路を急ぐ。
2人を見守るように星がチラチラと瞬く、春の夜のことであった。