第12章 悦楽の反転
顔を赤くしながらも、凛とした声で告げられた言葉。
それは彼を一人の男として、そして何より信頼に足る存在として受け入れているという告白だった。
「……お前、……そういうことを……」
相澤は言葉を失い、喉を詰まらせた。
教師として、彼女をこの泥沼から引き揚げなければならないという義務感。
それと同時に、自分を「選ばれた相手」だと言ってのける彼女の言葉が、男としての欲をこれ以上ないほどに満たしていく。
「……馬鹿が。そんなこと、俺に言ってどうする」
相澤は視線を逸らしたが、その耳朶は微かに赤らんでいた。
(……信頼、か)
相澤は心の中で、自分に向けられたその言葉を反芻した。
教え子の危うい変容に危機感を覚えながらも、彼女の「特別」になれたことへの、抗いがたい喜びを、どこか隠しきれずにいた。
「教師として、お前にそう思ってもらえるのは……ありがたいことだ」
その瞳には教師としての冷静さが戻りつつあった。
「……だが、お前はこのまま、男たちに抱かれ続ける生活を、ずっと続けていくつもりか?」
核心を突く問い。
今、この部屋に漂っている濃厚な精液の匂いや、の肌に残った無数の痕跡。
それらが物語る異常な日常。
相澤は彼女がその濁流に呑み込まれ、自分自身を見失っていくのを何より恐れていた。
「……っ、本当は……」
は俯いた。
轟に愛された時の熱や、先ほど相澤を悦ばせた時に感じた倒錯した充足感。
それらは確かに快感で、今の彼女の身体には抗いがたい栄養となっている。
「エッチの気持ち良さも、誰かに求められる喜びも……知ってしまいました。でも、本当は……普通に恋をして、その人から大切に、愛されるようになりたいです」
ぽつり、ぽつりと零れる本音。
無理やり開拓され、男の精を欲するように作り替えられた身体。
疼きが止まらず、自分から男を求めてしまう今の自分が、たまらなく惨めに思える瞬間がある。
「今は、身体が勝手に疼いて……男の人を欲しくなっちゃう。でも、もし……もし治せるなら、元に戻りたいです」
震える声で告げられたその言葉は、心の悲鳴にも似ていた。
相澤はその小さな肩を包み込むように、今度は迷いなく手を伸ばした。